Let’s Go KISS!

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“Let’s go KISS!” これは、マーケティング関係の仕事をしていたとき、アメリカ人のボスが口癖のように言っていた言葉です。もし職場で上司からいきなりこんなことを言われたら、びっくりしますよね。セクハラをされたと思ってしまう人もいるかもしれません。

実は、私のボスは「KISS原則」のことを言っていたのです。KISSとは、アメリカの航空機メーカー、ロッキード社で設計チームを率いていたケリー・ジョンソンの言葉: “Keep it simple, stupid”(できるだけシンプルにしておけ)の頭文字からとった略語です。KISSは、エンジニアの世界をはじめ、ソフトウェア開発やビジネスの世界でも広く用いられてきた概念です。“Simple is best”という言葉はよく耳にされると思いますが、意味するところは同じです。つまり、設計の単純性や簡潔性が成功へのカギであるというメッセージです。

シンプルであるということは、コミュニケーションにおいても、とても重要な要素です。なぜなら、シンプルでなければわかりづらい。シンプルでなければ伝わりにくい。シンプルでなければ記憶に残らない。シンプルでなければ説得力がない。ということで、シンプルさは効果的なコミュニケーションへのカギでもあるのです。

英会話を学ぶ際にも、シンプルであることを意識するだけで、不思議なほど英語が口をついて出てくるようになることをご存知ですか?私たち日本人が頭で考えたことをなかなか英語にできない理由のひとつは、日常当たり前のように使っている日本語独特の言い回しや熟語、また、謙遜や相手への敬意から美しく婉曲にまとめられた大人の述語表現などを、そのまま英語に翻訳しようと頑張ってしまうことにあります。

私たちは日本語ネイティブのため、何かを言いたいとき、大人になる今日まで蓄積してきた日本語データベースの中から適切な言葉を選び出します。ところが、それをそのまま英語に翻訳しようとした場合、その日本語に該当する英単語やフレーズを知らなければアウト。また、暗記しているはずの英単語も、その場で瞬時に思い出せなければ会話は成り立たずアウトです。

英語で話すために英語ネイティブではない私たちにできることは、ここでは「何が言いたいのか」という内容のエッセンスにフォーカスし、そのエッセンスをできるだけシンプルで平易な日本語に置き換え、それをすでに知っている英単語や英語のフレーズを使いながら柔軟に表現することです。

そもそもプロの通訳者の方々の最大のスキルとは、語順も言い方も、そして、もともと言葉の文化が英語とは大きく異なる日本語を、決して直訳ではなく、英語として最もフィットする表現に瞬時に「言い換える」ことができる能力だと思います。通訳者の方々のスキルレベルには及ばないものの、このシンプルに言い換えるという発想と習慣は、練習を積めば誰でも身に付けることが可能です。何かを伝えるとき、英語の表現方法はひととおりではありません。あなたなりの発想と情景描写で自由に表現すればよいのです。

日常会話に関して言えば、文法知識は中学校レベルでほぼ十分と言えるでしょう。また語彙力についても、それほど沢山の単語を知らなくても会話は可能です。例えば、英語の基本動詞と呼ばれるものがあります。代表的なものとして、say、 have、 take、 get、 give、 makeがありますが、実際、ネイティブの人たちは、これらの動詞で日常会話から仕事の会話までのほとんどをこなしています。

例として、sayを使うとこんなことが言えます:
彼女に拒否されてしまった ⇒ She said to me “No.”
彼はいつも弱音を吐く ⇒ He always says to me “I can’t do it.”
その男がついに犯行を認めた ⇒ The man finally said “I did it.”
法律では20歳未満の飲酒は禁じられている ⇒ The law says people below the age of 20 must not drink alcohol.

まずは、これらの動詞を使うだけで、一体どれだけのことが言えるのか、どれだけの表現が可能なのかを、一度チェックしてみてください。あなたが会話で伝えたいことのほとんどは、これらの動詞を使いシンプルな文を組み立てることによって表現できるはずです。

英語がなかなか口から出てこないというあなたのお悩みは、言いたいことをつい難しい日本語で考えてしまったり、頭に浮かんだ日本語表現を文字通り翻訳しようとしていることが原因かもしれません。あなたが言いたいこと、そのエッセンスを、まずはできるだけシンプルで易しい日本語に置き換え、それを英語で表現する習慣を身に付けてみてください。つまり、“Let’s go KISS!”です。何事もシンプルにいきましょう!

See you!