Mrs. Ikedaに愛をこめて

こんにちは、eigomob.comへようこそ!

私と英語との最初の出会いをくれた女性がいました。当時、私たちは、その方をMrs. Ikedaと呼んでいました。確か私が小学校4年生の時だったと思うのですが、近所に住む同級生のお母さんの親戚の方が英語をおしえてくれるということで、私を含む3~4人の同級生仲間で、ごくごくカジュアルな英会話のレッスンを受けることになりました。

Mrs. Ikedaは、アメリカ人のご主人と大学生のお嬢さんをお持ちの、物腰も話し方もとても柔らかな、いわば大和なでしこタイプの日本人女性でした。それでも、「彼女はアメリカ人だ!」と感じたのは、彼女のお宅で食事をご一緒させていただいた日のこと。デザートのフルーツゼリーをいただいていたところ、「ゼリーにマヨネーズはいかが?」と聞かれた瞬間でした。

Mrs. Ikedaのレッスンでは、テキストは特になし。当時の小学校では英語の授業はなかったため、私たちは、英単語も英文法も一切知らない状態で、ただ耳と口だけで英語を学び始めたのです。今から思えば、それは、英語を話す親のもとに生まれた子供が英語を覚えていくプロセスにやや似たものがあったかもしれません。

あの頃を懐かしく思い出しながら、今、改めて気づかされた英会話とリスニングのヒントについてお話ししたいと思います。

文字の意識が会話の障害となる
学校の授業で英語は得意だったという方も、実際に外国人と英語で会話する機会を持つと、「これは、私の知っている英語とは全然違う!」という印象を持たれるのではないかと思います。まず、「速くて何を言っているかわからない」という感覚に始まり、だからと言って、ゆっくり話してもらっても、やっぱり「何と言っているのかよくわからない」なんていう経験をお持ちではないでしょうか?これは、「文字の英文」と「話す英文」の間に、それはそれは大きなギャップがあるからなのです。

「文字の英文」は、文字どおり単語の連続です。私たち日本人は、読み書き中心に英語を学習してきたため、単語単位で英文の意味を捉えて理解することは比較的得意です。ところが、ネイティブの人たちが「話す英文」は、目で見る英文とは別物です。彼らは、基本的に単語ベースではなく、音節ベースで英語を話すため、単語間での子音と母音の連結が起こったり、子音の音が消えてしまったり、特定の単語間で音が短縮されたり、音が変わったりという現象が常に起きるのです。カジュアルな会話になればなるほど、省エネ的に音の短縮や脱落が頻繁に起こります。また、英語は、センテンス間も切れ目なくつなげて話される特徴があります。こうしたことから、単語単位で英文を理解しようとするアプローチでは、ネイティブの英語を聞き取ることはできないのです。

Mrs. Ikedaに英語を習っていた頃は、英語に関する文字の知識は全くなかったため、「話す英文」の音やリズムを何の先入観もなく覚えていくことができたのだと思います。そんな私も、中学、高校を経て、しだいに受験英語に毒されていくわけですが、英会話にとって必要なことは、「頭の中で単語を組み合わせて英文を作っていく」プロセスとは別のところにあります。

リスニングでは文脈を読み取る
英会話の初心者ほど、ひとつ一つの単語を聞き取ることにこだわってしまいがちです。確かに、聞き取れる単語の数が多いほどリスニングができることも事実です。ひと言、ふた言の会話レベルでは、それで良いかもしれません。でも、それ以上に長い会話に向き合う場合、例えば、相手が何かを説明していたり、起承転結を伴うできごとについて話をしているような場合には、個々のワードよりも、話の流れや文脈を掴んだ方が内容を理解しやすくなります。相手がどのような状況について話しているのかを把握することで、多少聞き取れないワードがあっても、相手の言いたいことが理解できるケースが多いのです。相手の言いたいことが理解できれば、コミュニケーションは成立です。何かの英語教材に、相手が「何を言ったか」ではなく、「何を言おうとしているか」に注意を向けながらリスニングするのがよい、と書かれていましたが、このアプローチは正解だと思います。これは日本語の会話でも同じですね。

Mrs. Ikedaのレッスンにおいて、私は結構、優等生であったかもしれません。ある日、母がおしえてくれたのですが、Mrs. Ikedaは、私のことを次のようにコメントしていたそうです。「坂さんは、レッスンの流れがしっかりと予測できていて、いつも次の準備ができている」これって、褒め言葉ですよね?!私はそう信じて疑いません。繰り返しになりますが、リスニングにおいても、話の流れを予測しながら文脈を読み取っていくことが攻略のポイントです。

さて、今これを書いている最中に、ラグビーワールドカップの準々決勝で、日本が南アフリカに破れました。日本代表チームの勇姿がこれで見納めとなってしまうのは大変残念です。彼らは、本当に沢山の感動を私たちにプレゼントしてくれましたね。One Teamとしての彼らの躍進を支えたひとつの鍵は、メンバー間の密なコミュニケーションでした。彼らが日本語や英語をミックスしながら、チーム全体で丁寧にコミュニケーションを図っていく姿はとても印象的でした。特に国際試合では、レフリーとも英語でしっかりコミュニケーションが取れなくてはいけません。ラグビーの世界に限らず、今や、「私は英語はわかりません」なんて野暮なことを言える時代ではなくなりつつあるように思います。

See you!