英語には句読点がない!?

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テニスの全仏オープンが開幕中です。開幕初日にナダルの引退セレモニーがあり「ひとつの時代が終わった」感に包まれました。出産を経てツアーに復帰している大坂なおみ選手の1回戦がものすごい接戦で、女子の試合で久しぶりに興奮しました!結果は惜しくも敗退となりましたが、ママになってもますます強い彼女に今後も期待します。

さて、「英語には句読点がない !?」という今回の表題ですが、もちろん英語にはカンマもコロンもピリオドも存在します。そして、単語と単語の間には、しっかりと1スペースの空きがあります。ただし、それはあくまでも書き言葉の場合。実は、英語の話し言葉には、間(ま)という概念がありません。私たち日本人がネイティブの英語をなぜ速いと感じ、なぜ聞き取れないのか、その大きな理由がここにあると思います。

過去のブログで「英語は速いのではなく短いだけ」という著名な同時通訳の方の言葉をご紹介しましたが、今回の内容は、この言葉に深く関係しています。なぜ英語は「短い」のか?それを理解するために、まずは日本語と英語の音節(発音の単位。音声学ではシラブルと呼ぶ)の違いについて説明します。

日本語の音節は、基本的に「母音のみ」のパターンである「あ(a)・い(i)・う( u)・え(e)・お(o)」と「子音/母音」のパターンである「か(ka)・き(ki)・く(ku)・け(ke)・こ(ko)」(カ行の例)の2種類です。音節の音の長さは常に一定で、抑揚はなくフラットに発音されます。一方、英語の音節には「子音/母音/子音」「母音/子音」「子音/母音」「母音のみ」とさまざまなパターンがあり、各パターンにおける音の長さも色々です。さらに、英語の単語では特定の音節が強く長めに発音される(=ストレスを置く)特徴があるため、文に独特の抑揚や強弱が生まれ、音がつながったり、同化したり、変化したりする現象が起こりやすくなっています。

では、英語が「短い」とはどういうことか、具体例を挙げてみます。例えば「バックグラウンド」という言葉を日本語で発音すると「バッ・ク・グ・ラ・ウ・ン・ド」と7音節になりますが、英語の「background」は「back・ground」と2音節で、圧倒的に短くなります。また、子供を意味する「チャイルド」という言葉では「チャ・イ・ル・ド」と4音節で発音する日本語に対し、英語では「child」と1音節で一気に発音されます。これらの例からも、日本語発音と比べて英語の発音ははるかに短いということがわかると思います。つまり、ネイティブが発音する background や child という英語を日本語感覚で聞き取ろうとすると耳が追い付かないため、英語は速いという感覚が生まれるのです。

英語のリスニングを上達させるには、特に日本語にはない子音のつながりをきちんと聞き取れるようになることが大切です。そのためには、聞き取り練習だけではなく、自分でも正しく発音できるように練習する必要があります。例えば、street、drive、green などの単語では str、dr、gr と子音が連続しています。これらの単語を、子音の後には必ず母音が続く日本語の感覚で「su・to・ri・i・to」「do・ra・i・vu」「gu・ri・i・n」と余計な母音を入れて発音してしまうと、ネイティブには伝わりません。自分でそのように発音していると、リスニングの際にも子音の後に母音が来ることを感覚的に期待してしまうため、それだけでスピードについていけなくなることがあります。こうしたことを解消するためにも、正しい発音を自ら身に付けるための練習はとても重要です。

ここまで、日本語と英語の音節の違いについてお話ししてきましたが、日本語と英語の話し言葉には、もうひとつ特徴的な違いがあります。日本語には語と語の間で音を切りながら話すという特徴があり、話の途中で何回かの息つぎが入ります。それに対して、英語には音を切るという習慣がありません。話し始めに息を沢山吸って、文の始まりから終わりまで一気に話し切ります。そのため、私たち日本人が英語を聞き取ろうとする場合、日本語を聞く感覚で頭の中で無意識に間を取ってしまうと、もう次の音が聞こえなくなってしまいます。

このように、単語間で息を止めずに連続して話す英語では、前後の単語の音が音節単位でつながり、弱い音は脱落したり変化したりするため、文字になった英語とは全く別物のように聞こえることがあります。例えば、ネイティブが話すカジュアルな英語は、下記のように聞こえてきます。

聞こえてくる音:Wen didja ear da news?
文字にした英語:When did you hear the news?

聞こえてくる音:I didi’ cuz I thaw t w’z righ’.
文字にした英語:I did it because I thought it was right.

聞こえてくる音:Ca new tell ’er were do go?
文字にした英語:Can you tell her where to go?

聞こえてくる音:T wasn’ cher mistake.
文字にした英語:It wasn’t your mistake.

最後に、つながる英語を上手く話すための発声と呼吸についてお話しします。これを読んでいるあなたは、「英語は腹式呼吸で話すもの」とか「日本語は口発音、英語はのど発音」などという言葉をどこかで耳にしたことがあるかもしれません。前述のとおり、日本語の音節は「ka」「sa」 など、多くても音の要素が2つだけ。一方、英語では、たとえ1音節の単語でも straight、strength など音の要素が多いものがあり、日本語と同じ発声方法では息の量が不足がちになります。また、日本語より長い英文を抑揚や強弱を交えながらひと息に話し切るためには、肺活量が多く、息がとぎれそうになることをコントロールしやすい複式呼吸が適しています。さらに、単語間を音節単位で滑らかにつなげながら連続して話すためには、のどを開いたまま声を出すのど発音が理想的ということになります。ネイティブスピーカーたちは、英語の特性上、自ずと複式呼吸やのど発音を実践しているということだと思います。

英語は、音節のかたまりを認識することができれば聞き取ることができます。つながる英語に慣れるためには、ネイティブスピーカーが音節をどのようにつなげて発音するかを学び、自分が英文を読んだり話したりする際に、途中で切る癖をできるだけなくしていくことです。単語間で音が途切れるブツ切り英語は、ネイティブスピーカーにとってとても不自然で奇異な英語に聞こえるらしいです。あなたも、明日からぜひ自然な英語を目指して練習に励んでみてください。キーワードは、「滑らかにつなげる!」です。

See you!