英訳のツボは情景描写にあり

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サッカーワールドカップ・グループリーグの日本対コスタリカ戦は、残念な結果に終わってしまいましたね。日本代表には何とか決勝トーナメントにコマを進めてもらいたいものです。次の対戦相手は何と言っても強敵のスペインですが、私たちも全力で応援いたしましょう!!

さて、言いたいことを英語で表現するためのポイントと言えばさまざまあるとは思いますが、ひとつ大事なことは、日本語の発想にとらわれないことだと言えるでしょう。言い方を変えれば、日本語を直訳しようとしても伝わる英語にはなりません。英訳の際に意識すべきツボは、『主語の選び方』と『情景描写』です。この2つを押さえると、うまく表現できる場合が多く、伝わりやすい英語になります。

私が海外出張で初めてアメリカの西海岸を訪れたのは、20代前半のこと。当時の私は、まだ十分に使えるほどの英語力が身についておらず、海外生活が長かった上司と高校時代をアメリカで過ごした同僚に頼りっきりの旅でした。街中で現地の人たちのネイティブ英語に触れた時には、彼らの話す言葉の中に何か生き生きとしたものを感じました。

特に印象に残ったのは、目的地に向かう途中で道をおしえてくれた男性の “You can’t miss it.” (すぐ見つかりますよ) という表現。今思えば、これは道案内の定番表現なのですが、これこそ究極の情景描写ではないでしょうか。この表現を当時初めて耳にした私は、「これが生の英語表現か!!」とかなり感動してしまいました。また、レストランで飲み物などを注いでもらう時や、料理に香辛料などを振りかけてもらう際に言われる“Say when.” (いいところで言ってください) という表現も、私の耳にことさら新鮮に響きました。

その後しばらくして、ネイティブの英語がなぜ生き生きしていると感じたのか、その理由が私なりにわかってきました。それは、ネイティブの人たちが使うダイレクトな表現や具体的な情景描写が、ありありとした臨場感をもたらすためではないかと思います。そしてもうひとつ、英文には必ず主語が存在しています。私には、どうもこの主語というものの役割も臨場感を醸し出すことに一役買っているような気がするのです。以前、知り合いの女性が海外のスーパーマーケットにナマズ(catfish)が並んでいるのを見つけて、「これ、どうやって料理するのかしら?」と他の買い物客に聞いたところ、“You can fry it.” (フライがいいですよ) という答えが返ってきたそうです。その時、彼女は、“You can”で始まるフレーズを返されたことがとても印象に残ったそうです。そして、「そう言えば、英語の基本は『主語』+『動詞』だった」と、昔の英語の授業をふと思い出したそうです。

一方、英語では、人や動物に限らず、『物』や『事』も主語になり得ますが、英語をスマートに使いこなす上で、これはとても重要なポイントです。実際、英語ネイティブの人たちは、会話の中で『物』や『事』を主語に用いる頻度がとても高いように思います。無生物主語や擬人法を用いることによって、物事がより効果的に説明できたり、その場の状況をよりリアルに表現できたりするからです。日本人でも英会話が得意な人たちは、物や事を上手に主語に据えた英文を操っているものです。また、無生物主語の英文が使えるようになったとたんに英会話が上達したという方もいらっしゃいます。特にビジネスの場面では、物や事を主語にすることで、複雑な状況や事柄もシンプルかつロジカルに説明できるケースが沢山あります。例えば、以下の例をご覧ください。

「このレポートはもう少し手を加える必要があります」

We need to work on this report a little more.” と言う代わりに、This report needs a little more work.” と「レポート」を主語にすることで、すっきりとわかりやすい表現に。

「このシステムを使えば、画像データを抽出できます」

“If you use this system, you can get image data.” と言う代わりに、This system can get you image data.” と「システム」を主語にすることで、すっきりとわかりやすい表現に。

「レイアウトを変更すると、事故が起こる恐れがあります」

“If we change the layout, there will be some risk of an accident.” と言う代わりに、The layout change has some risk of an accident.” と「レイアウト変更」という『事』を主語にすることで、すっきりとわかりやすい表現に。

何かをとっさに英語で表現しようとすると、つい日本語をそのまま直訳しようとしてしまう人は少なくありません。実は、英語をなかなか思うように話せるようにならない大きな原因がそこにあります。決して日本語にとらわれることなく、伝えたい事柄の具体的な情景描写を行うことだけに注力してみてください。以下に例を挙げて情景描写のコツを説明します。

「私の弟は、弱音を吐いてばかりいる」

“My brother always says ‘I can’t do it.’ ” —「弱音を吐く」とはどのような状況かを具体的に表現する。

「彼は、その計画にあまり乗り気ではない」

“He doesn’t like the plan very much.” —「乗り気でない」のは、つまり気に入っていないから。

「彼らは津波により甚大な被害を受けた」

“The Tsunami gave them big damage.” —「津波」を主語にすることで状況説明が簡単になる。

「月々5000円でその旅費が賄える」

“5,000 yen per month can cover the travel expense.” —「月々5,000円」をそのまま主語にする発想があれば、シンプルに表現できる。

「法律では、20歳未満の喫煙は禁止されている」

“The law says people under 20 must not smoke.” — 何かと便利なsayの用法を使う。「禁止されている」=「してはいけない」ということ。

「神奈川県警は、横浜医師を薬事法違反で逮捕した」

“Kanagawa Police arrested Dr. Yokohama because he didn’t follow the law on medicines.” —「薬事法」の正式な英語を知らなくても、意味が通じる表現を使えば問題なし。「違反する」という英語がわからなければ、意味を考えて表現方法を工夫してみる。

*法律に違反する:break the law / violate the law / be against the law
*薬事法:pharmaceutical law / Pharmaceutical Affairs Act (日本法)

いかがでしたか?難しい日本語表現も、自分なりに噛み砕いて情景描写することにフォーカスすれば、あなたの知っているシンプルな英語で自由に表現することができます。

それでは最後に、頑張れニッポン!!

See you!